現在、実際に建設されている風況観測タワーは、高高度のもので地上高100m程度にもなっています。これは、風力発電機の大型化に対応したものであり、「べき法則」などによる上空の風の推定(外挿)では、風力発電機の発電量の予測が不確実で、ハブ高さでの実測が必要とされるためです。
しかし、この地上高100mという高高度のタワーは、建設コストが高いだけでなく、故障時の修理も困難になります。また、100mという高度であっても、大型風車の受風領域全体がカバーできるわけではありません。大型風車の羽根の先端の高さは、百数十メートルにも達するため、タワーを超える高さの風がどうなっているのか、という不確実性は残ってしまいます。
一方で最近、レーザー光によって上空の風速を測定できるドップラーライダが風況観測機器として実用化されています。風況観測用に開発された小型のドップラーライダは、風車の受風領域がほぼ風速測定高度となっており、タワーでは測定困難だった高高度の風を測定できます。またドップラーライダは、タワーに比べて、省スペース、設置や移動が容易、設置の際の制約が少ないといったメリットに加えて、故障時のメンテナンスもはるかに容易です。消耗部品などを交換すれば、何年かは繰り返し使えるものと思われます。
ただドップラーライダは、タワー式の風況観測方法に比べると、まだあまり使用例が多くありません。またドップラーライダは、風杯型風速計とは測定原理が異なるため、風の乱れや降雨の状況などによっては、タワー式の風況観測データと風速値が完全には一致しない可能性も否定できず、用いるには若干の不安もあります。
しかし、このような不安要素を加味しても、ドップラーライダには十分な導入メリットがあると思われます。その使用方法として、タワー式の風況観測とドップラーライダでの観測とを併用することが考えられます。例えば、ドップラーライダで測定できる最低高度が50mである場合、50mの風況観測タワーを建てて、ドップラーライダとの同時観測を行います。そして、一つの高度だけでもドップラーライダの測定値とタワーの測定値とを比較できるようにして、百数十メートルまでの風況観測を実施します。
また、タワーを建てる前に、短期間だけでもドップラーライダのみで風況観測を行い、おおよその年平均風速や風速の高度分布などを把握しておくことも有効と考えられます。ある程度の見通しが立った上で、次の投資となるタワーの建設やタワーの高さが決定できるからです。このような工夫をすることで、効率が良くコストパフォーマンスの高い風況観測が可能になるものと考えられます。
ドップラーライダの導入には多少の初期投資が必要ですが、特に継続的に風力発電事業を進められようとする事業者の方にとってはメリットの大きい装置です。これから大型風力発電による発電事業をされようとする方は、ドップラーライダの利用を検討されるのが良いと思われます。
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